冬の車で一人でコーヒーを飲みながら聴きたい名曲 BUMPの「スノースマイル」

BUMP OF CHICKENの「スノースマイル」は、冬という季節の冷たさを、これ以上ないほどやさしい物語に変えてしまう曲だ。

この歌は、いきなり逆説的に始まる。
「冬が寒くって本当に良かった」。
誰もが嫌がるはずの寒さを、あえて肯定する。その理由が、「君の冷えた左手を僕の右ポケットにお招きするため」という一行で明かされた瞬間、リスナーの感情は一気にひっくり返される。

前を見ていたと思ったら、後ろから突然サプライズを食らう遊園地のアトラクションのような構造。「?」が「!」に変わる、その一瞬のおどろきこそ、藤原基央の作詞の魔法だ。

曲の冒頭には、冬の澄んだ空気のような清々しさがある。冷たいけれど透明で、どこか胸がすっとする。
そこに描かれる象徴的な歌詞が、「キレイなままの雪の絨毯に 二人で刻む足跡の平行線」というフレーズだ。白い雪原に並んで続く足跡が、目に浮かぶほど映像的でありながら、「平行線」という言葉が二人の距離感や関係性まで暗示している。この一行だけで、恋の風景と、その儚さまでが伝わってくる。

物語は最後、曲の終盤に、あの右ポケットが今は「思い出」になり、「君のいない」世界線が静かに示される。手を温めるためにあったポケットは、もう誰も入らない空洞として残る。ただ、そこに漂うのは、はっきりした絶望ではなく、どうしようもない喪失感と、やさしい悲しみだ。

この曲が胸に残るのは、幸せな瞬間と、それが過去になってしまった事実を同時に抱え込んでいるからだろう。
冬の夜、車の中で一人、あたたかいコーヒーを飲みながら聴くと、「スノースマイル」は音楽というより記憶のように心にしみてくる。冷たさとぬくもり、幸福と喪失。その両方を抱えたまま、静かに降り積もる雪のような名曲である。