“国民的”になる前のMr.Childrenの隠れた名曲
90年代初頭、まだ「Mr.Children」という名前が“国民的”になる前。彼らが鳴らしていたのは、どこか軽やかで、少し背伸びした都会のポップスだった。「メインストリートに行こう」は、そんな初期ミスチルの空気を真空パックしたような一曲だ。
当時の歌詞には、80年代バブルの残り香が色濃く漂う。英語をまじえた少し気取った言い回し――たとえば〈星降る街で君とランデブー〉のようなフレーズには、Hot-Dog PRESSをめくりながら“彼女がほしい”と願っていた10代〜20代男子の、甘くて青い都市生活の夢が投影されている。そこにあるのは、後年の社会性や内省ではなく、キラキラした表層のロマンス。女の子が“憧れの象徴”として描かれていた時代の、軽やかな空気だ。
内省へ向かう前夜のミスチル
もちろん、このあとミスチルは『CROSS ROAD』『innocent world』を経て、さらに内面へ、そして時に闇へと潜っていく。だが「メインストリートに行こう」には、その前段階――まだ世界がまぶしく、恋がすべてを動かしていた頃の彼らがいる。音楽的にも、後の壮大なバラード路線とは異なる、爽やかなシティポップの系譜に近いサウンドが印象的だ。
走り出したくなるイントロの魔法
特筆すべきはイントロの躍動感だろう。軽快なリズムと前に転がるようなグルーヴは、まさに“走り出したくなる音”。助手席に座る、できたばかりの恋人。窓の外に広がる都市のネオン。やがて高速を抜け、湘南へ向かうドライブ――青い空、潮の匂い、遠くで砕ける波音。そんな映像が自然に浮かび上がる。
サザンのような海の解放感とも違う。もっと都会寄りで、もっと“若さの現在形”に近い風景。「メインストリートに行こう」は、初期ミスチルが持っていた“都会と恋のきらめき”を最もストレートに刻んだ、小さくも確かな名曲なのである。

