口ずさみたくなる“ちょうどいい”一曲
清水翔太という名前は知っていても、熱心に追いかけてきたわけではなかった。そんな自分の耳に、この「花束のかわりにメロディーを」はAmazon Musicのシャッフル再生でふいに流れ込んできた。第一印象はシンプルだ。「あ、これ完全にカラオケ向けの曲だな」と。
メロディーは素直で、キーも無理がなく、音域も極端な上下動がない。歌っていて苦しくならない。むしろ、ちょうどいいところでサビに入ってくるから、声を張る快感だけを味わえる。実際、一人ドライブで口ずさむと不思議とテンションが上がるタイプの曲だ。派手に盛り上がるわけではないのに、気分が少しだけ前向きになる。その“ちょうどよさ”がこの曲の最大の魅力かもしれない。
歌詞は王道のラブソングだ。
「君を愛するために僕は生まれてきたよ」
と、活字にすると少し気恥ずかしいほどストレート。でも、この曲のメロディーに乗ると、その青臭さがむしろ清々しく響く。少しテンションの上がった飲み会で、気になる女の子がいる場面で、冗談めかしてこのフレーズを歌えたら――あからさますぎず、でもちゃんと想いは伝わる、ちょうどいい“距離感のアプローチ”になるかもしれない。
「花束のかわりに」というロマン
この曲が面白いのは、タイトルの発想だ。「花束のかわりにメロディーを」。物理的な贈り物ではなく、歌=気持ちを贈るというロマンチックな設定が、そのまま曲の存在意義になっている。これは“聴くためのラブソング”というより、“歌って誰かに届けるためのラブソング”なのだ。
清水翔太という“歌で気持ちを渡す人”
ここで少し、清水翔太というアーティストについて触れておきたい。
彼は10代の頃からR&Bをベースにした歌唱力で注目されてきた、いわば日本の“歌うたい”の正統派だ。感情の起伏を声で表現するのが非常にうまく、ビブラートやフェイクも多用するが、それが嫌味にならず、ちゃんと“感情の動き”として聴こえる。作家としても、等身大の恋愛や弱さを歌に落とし込むのが得意で、リスナーが自分を重ねやすいタイプのシンガーソングライターだ。
「花束のかわりにメロディーを」も、まさにその資質が生きている。技巧を見せつけるのではなく、誰かが歌っても成立するように設計されている。だからこそ、カラオケで映えるし、車の中で一人で歌っても様になる。
ただ、この曲は決して代表曲として誰もが知っているタイプではない。だからこそ、「え、これ誰の歌?」と聞かれたときのために、
「清水翔太の曲だよ。R&Bベースのシンガーソングライターでさ…」
と、少しだけうんちくを仕込んでおくのも悪くない。マイナーだからこそ、自分だけの“切り札”として使える一曲でもあるのだ。
派手な名曲ではない。けれど、誰かの前で歌ったときに、ちゃんと意味を持つ曲。
「花束のかわりにメロディーを」は、そんな“実用性の高いラブソング”として、静かに輝いている。


