3分間だけ開園する、音楽のディズニーランドーエビ中「仮契約のシンデレラ」はアイドルソングの真骨頂
私立恵比寿中学の「仮契約のシンデレラ」は、単なる“かわいいアイドルソング”の枠を軽々と飛び越え、ポップミュージックが持つ祝祭性そのものを結晶化した一曲だ。イントロが鳴った瞬間、リスナーはまるでディズニーランドのゲートをくぐったかのような高揚感に包まれる。
ブラスのきらめきと跳ねるリズムは、パレードの先頭で踊るダンサーたちの足音のようであり、Aメロからサビにかけての展開は、ミュージカルがクライマックスへ駆け上がっていくあの感覚と驚くほど近い。音楽が“物語”として機能しているという意味で、この曲は極めてディズニー的なのだ。
その物語性を支えているのが、言葉遊びに満ちた歌詞である。「ありをりはべりいまそかり」といった古語や、「I-my-me-you-your-you」と英語の代名詞の活用が、あたかもリズム楽器のようにフレーズの合間に挿し込まれていく。これは意味を説明するための言葉ではなく、音としての言葉を楽しませる仕掛けだ。7coの「0.0000%」における「いろはにほへと恋ぬるを」を思わせる、言語の遊戯性がここにもあり、日本語と英語、古典と現代が一瞬でミックスされることで、楽曲の軽快さはさらに増幅されている。
そこに飛び込んでくる「ツンデレビーム」という言葉の破壊力も見逃せない。ツンデレというオタク文化由来の感情表現を、ビームというヒーローものの必殺技に結びつけてしまうセンスは、まさにエビ中の真骨頂だ。恋の照れ隠しすらもファンタジーに変換し、シンデレラの物語世界へと回収してしまう。この一語だけで、この曲が現実の恋愛ではなく、ポップカルチャーとしての恋を描いていることがはっきりする。
だから「仮契約のシンデレラ」は、聴いているうちに“好きな人に告白する曲”というより、“恋する自分を演じるミュージカル”のように感じられてくる。ディズニーランドでパレードを眺めている時と同じく、私たちは一時的に日常から切り離され、キラキラした物語の観客になるのだ。
2025年にこの曲が再びSNSを中心に大きく広がったのも偶然ではない。ストレートな感情表現と、言葉と音の遊び心、そして祝祭的なメロディ。それらが合わさった「仮契約のシンデレラ」は、時代を越えて“楽しい”を保証してくれる稀有なポップソングである。
それはまさに、3分間だけ開園する、音楽のディズニーランドなのだ。



