コレサワ『♡人生♡』――“かわいい”の皮をかぶったリアル。令和を生きる女の子の心をそっと代弁する
ふわっとした歌声と手描きアニメのようなビジュアルで“かわいい”のイメージが定着しているコレサワ。しかし、その作品の本質は決して「ゆるくてポップ」だけではない。
彼女は、恋愛の曖昧さや人間関係の脆さ、心の奥にしまい込んだ黒い感情まで、小さな雑貨屋で売っているような愛らしい言葉にそっと包み直し、リスナーの前に差し出してくれるアーティストだ。
そんな彼女が放つ『♡人生♡』は、まさに“令和を生きる女の子の応援歌”とも呼べる作品。
ここには、優しさと奔放さが自然に同居し、「こうじゃなきゃダメ」と押しつけない、今の時代らしい価値観が濃密に詰まっている。
コレサワというアーティスト
大阪府摂津市出身。くまのキャラクター“れ子ちゃん”を自身の分身として用い、素顔を明かさない活動スタイルで知られている。匿名性がありながら、歌詞は徹底してリアルで、赤裸々だ。
“本当はみんな言いたいけど口にしない気持ち”をすくい上げるのが上手く、
「かわいさ」「ユーモア」「毒っけ」ーーその三層を巧妙に重ねることで、誰もが抱えがちな弱さを肯定してくれる。このスタイルはデビュー以来一貫しており、コレサワは“心の代弁者”として多くの女性から支持を得ている。
かわいい雑貨みたいな詩世界
『♡人生♡』全体を通してまず感じるのは、言葉がとても“雑貨的”だということ。
色とりどりのマスキングテープ、木でできた小さなチャーム、ハート型の付箋。そんなアイテムが散りばめられたノートをめくるように、歌詞がページを進めるたびに新しい表情を見せる。
そのかわいさは単なる装飾ではなく、本当は重い気持ちも、やわらかく受け止められるように工夫された比喩表現でもある。飾りながら本質を隠さない、この絶妙な距離感がコレサワ流だ。
令和型女子の“気楽さ”と“しなやかさ”を肯定する
現代的なのは、恋愛や人生を語るときの“温度”だ。
昔ながらのドラマチックな恋愛ではなく、フツーの日常の何気ない男女の「あるある」を女子目線で素直に歌い上げている。そんな、令和女子のゆるさが随所に感じられる。
「♡人生♡」には「どんな形でも、自分の人生を自由に選べばいい」というコレサワ流のメッセージが静かに流れている。だから、聴いていると心が軽くなるのだ。
突然現れる“sex”が象徴するもの
かわいい語彙で埋め尽くされた世界のなか、ふいに “sex” という単語が落ちてくる場面がある。その唐突さにリスナーはドキッとさせられる。
これは単なる刺激ではなく、ある意味、男女の上下関係が逆転しつつある現代社会の女の子の社会的地位を象徴している。女性が性的な言葉をオモテで表現することが「はしたない」「品がない」と軽蔑された昭和の時代、女性にとっての性は「秘めた」ものだった。一歩引いて恥じらいを見せる女性を好ましいという価値観は「男尊女卑」の色彩の強い時代の美徳であり、男性の求める女性への幻想でもあった。
山田詠美が登場した時に、文壇から「品がない」と糾弾された時代はもはや終焉し、女の子が堂々と性を表現できる時代を迎えた衝撃をこのsexという歌詞は物語る。男女の性の境界線もあいまいになり、どちらかと言えば女性上位の世の中のシンボル的なフレーズだ。
『♡人生♡』は、自由で、奔放で、だけどとても正直。雑貨みたいに可愛い言葉の中に、女の子のリアルな感情がきらりと光る佳曲。MVがまたキュートなので、そちらも是非!



